ファンダメンタルズ分析(ヨーロッパ)

2018年12月12日

経済活動等の状況を示す基礎的な要因をもとに分析することです。
例えば、一国経済を分析する際の基礎的条件は、経済成長率、物価上昇率、失業率、財政収支の赤字(黒字)率、経常収支の赤字・黒字額などの指標を使います。また、広義の意味において政治状況や地政学的分析も含めることもあります。

株式においては、企業の財務状況や業績状況のデータをもとに分析し、PER(株価収益率)、PBR(株価純資産倍率)、ROE(株主資本利益率)などが代表的な指標として株式の本質的価値(ファンダメンタル・バリュー)を分析します。企業のファンダメンタルズ分析では、株式の本質的価値と市場価格にギャップが存在しても、いずれは本質的価値が市場で実現されるという考え方を重視します。ファンダメンタルズは、突発的な出来事を除くと一朝一夕に変化するものではなく、また、投資家にはなかなか伝わりにくいものです。相場動向を予測するには、日々変動する株価の過去の値動きの傾向をもとに売買のタイミングを捉えるテクニカル分析も、ファンダメンタルズ分析と並行して使われます。

またファンダメンタル分析はトップダウン、ボトムアップ、株式の場合バリュー投資、グロース投資などの考え方があります。ここでは為替の分析なので、注目すべき主要各国の経済指標を見ていきましょう。

注目すべき経済指標(欧州)

☆は重要度(☆☆☆は最重要、☆☆は重要、☆は注意、無印は参考)

☆☆ ☆☆
経済指標 頻度・発表 発表元 解説
Ifo景況指数(DI)
ドイツ 毎月
翌月の中旬
IFO研究所 約7,000社のドイツ企業を対象として、現況と今後6カ月の先行きに対してアンケート調査したもので、2000年を100として、現況と先行きを加重平均した指数を翌月下旬に発表。生産・在庫・受注・価格・雇用の4項目。欧州最大の経済規模のドイツの景気の先行きを示す経済指標として注目されています。※注
ZEW景況感指数☆ ドイツ 毎月
翌月の中旬
ZEW(欧州経済研究センター) ドイツの景況感についての調査結果(景況感指数)。今後6カ月の景気見通し(良くなるか、悪くなるか)について、アナリストや機関投資家、市場関係者など約350人を対象に行ったアンケート調査を基に算出した指数を翌月中旬に発表。50が基準。Ifoよりも1週間発表が早いので、Ifo指数を予想するという理由で注目する人もいます。
ZEW景況感指数 ユーロ圏 毎月
翌月の中旬
ZEW(欧州経済研究センター) ドイツのZEWによる景況感のユーロ圏版。
Gfk消費者信頼感調査 ドイツ 毎月
10日前後
市場調査会社GfK社 約2,000人の消費者を対象にアンケートが行われ、向こう1年先の景気見通し、期待収入、消費の動向に関するアンケートの結果を集計したもの。0が基準となっている。
INSEE家計景況感
フランス 毎月
20日過ぎ
フランス国立統計経済研究所
(INSEE)
2007年までは8月はバカンス月なので調査はしていなかったが、2008年以降は毎月、調査・発表している。2000人に電話調査。
INSEE製造業企業景況感
フランス 毎月
20日過ぎ
フランス国立統計経済研究所
(INSEE)
フランス国内の製造業(約4,000社)のがアンケート対象。製造状況(過去3か月、3か月先)、受注動向(全体、国際)、在庫状況、販売価格、フランス製品製造予測(製造、価格)について質問。
INSEE建設業企業景況感
フランス 毎月
20日過ぎ
フランス国立統計経済研究所
(INSEE)
フランス国内の建設業(約2500社)のがアンケート対象。従業員が11名以下の小企業は除外。活動状況、受注動向、設備稼働率、雇用状況、価格予測について質問。
消費者信頼感指数 ユーロ圏 毎月
当月20日頃
欧州委員会 当月データをEU加盟国ごとに集めて集計。
企業信頼感指数 ユーロ圏 毎月
当月下旬
欧州委員会 産業信用指標は、EUの製造業部門の企業の経済的期待を評価。業界代表の調査に基づいている。現在の注文数と3ヶ月後の生産数。季節調整済。ユーロ圏および産業部門の全体的な経済状況を評価するために使用される。同時に産業・消費者信頼感指数も発表。
ユーロ圏投資家信頼感指数 ユーロ圏 毎月 センティックス(ドイツの調査会社) ユーロ圏の経済活動に対する投資家の景況感を示す指標。約4000人の投資家(内機関投資家が約900人)を対象に、現況指数(直近)と期待指数(6カ月後)を足して、2で割り算出される。
PMI総合購買担当者景気指数
☆☆
ユーロ圏 毎月
20日過ぎ(速報値) 上旬(確定値)
マークイット社(Markit)ロンドンに本社を置く、グローバルな大手情報専門会社 製造業とサービス業の双方の購買担当者景気指数(PMI)を合わせた総合指数。毎月下旬に直近(同月)の速報値が発表され、また毎月上旬に前月の確報値が発表される。サンプリング数は5,000社以上。対象国は、独、仏、西、伊、蘭、オーストリア、アイルランド、ギリシャ。
ユーロ圏、独、仏、伊、西、蘭、ギリシャ、チェコ 毎月 20日過ぎ(速報値) 上旬(確定値) マークイット社(Markit)ロンドンに本社を置く、グローバルな大手情報専門会社 製造業とサービス業の双方の購買担当者景気指数(PMI)を合わせた総合指数。サンプリング数は3,000社以上。対象国は、独、仏、西、伊、蘭、オーストリア、アイルランド、ギリシャでユーロ圏の製造業89%相当。毎月下旬に直近(同月)の速報値が発表され、また毎月上旬に前月の確報値が発表される。
毎月 マークイット社(Markit) 製造部門の購買担当者(600社以上)の調査。経済発展と財務に対する期待だけでなく、生産の開発に関するいくつかの質問。
PMI建設業景気指数 毎月
20日過ぎ
マークイット社 イギリス国内の建設業(約170社)に対して調査を行っている毎月調査。イギリス社会では不動産関連の事業が比較的多く、建設支出の動向で英経済の好不況を見る傾向もあるようだ。
ドイツ 毎月
20日過ぎ
マークイット社 ドイツの建設業(200社以上)に対して毎月調査を行っている。
PMIサービス業購買担当者景気指数
独、仏、西、伊 毎月
マークイット社 マークイットエージェンシーとCharted Institute of Procurement and Supplyによって共同計算。サンプリング数は2,000社以上。対象国は、独、仏、西、伊、アイルランド。
PMIリテール購買担当者景気指数 ユーロ圏、独、仏、伊 毎月
20日過ぎ(速報値)
上旬(確定値)
マークイット社 大規模及び小規模の小売業者へのアンケート調査。50が基準値。
消費者物価
(HICP)
☆☆
ユーロ圏 毎月
翌月中旬
欧州統計局(EuroStat) 購入される消費財およびサービス価格の変化を示した消費者物価指数。2015年=100を基準。統一基準に基づいて加盟国集計を行っているこの指数でECB(欧州中央銀行)の金融政策の物価安定評価に用いている。ECBの目標としては「ユーロ圏のHICPが前年比2%もしくは2%に近い水準以下」としているため、将来の金利動向を予想する材料となる。
フランス 毎月月末 フランス国立統計経済研究所
(INSEE)
CPI,コアCPI、HICPと発表。月末に速報値、翌月中旬に確定値。
消費者物価
(HICP) ☆☆
ドイツ 毎月月末   主要5州(ヘッセン、バイエルン、バーデン・ヴェルテンベルク、ノルトライン・ウェストファーレン、ザクセン)のデータがそれぞれ発表され、金融市場がインフレに敏感になっている時にはそれらの数字も材料視されるが、ユーロ基準にあわせた調和消費者物価指数が他国と比較しやすい。
消費者物価
(HICP)
☆☆
毎月 イギリス国家統計局
(ONS)
所定の月の700の別個の消費財とサービスの価格の前月に比べた変化。12万社以上の企業から収集したデータを使用。
小売物価指数(RPI)
☆☆
毎月 イギリス国家統計局
(ONS)
住宅賃貸料のみを含むCPIとは対照的に、小売価格指数には、税金、家屋の減価、建物保険料などの住宅購入費用が含まれている。住宅ローンの利払いは指数計算に含まれている。
生産者物価指数(PPI) ユーロ圏 毎月
翌々月の上旬
欧州統計局(EuroStat) 生産者が出荷するときの価格を指数化したもの。
生産者物価指数(PPI) 毎月
翌月中旬
ドイツ連邦統計局 国内販売の国産鉱工業生産物のうち、約2,400品目を対象としている。電気ガスなどを含むが、生鮮食品や輸出入品は除外されている。原計数翌月中旬に、季節調整値はさらに1ヵ月後に発表される。ドイツでは卸売り物価指数も発表されているが、対象範囲が狭く、時系列データが少ないこともあり注目度は低い。
生産者物価指数(PPI)
インプット
毎月 国家統計局
(ONS)
英国企業が購入した原材料価格と燃料価格の変化。輸入された材料と燃料と国内の材料と燃料が含まれる。英国の製造業の経費を反映しており、消費者物価上昇の先行指標とされる。
生産者物価指数(PPI)
アウトプット
毎月 国家統計局
(ONS)
英国の製造業者が国内市場で商品を販売することによって受け取った金額の変化。製造原価(資材、燃料、ローンの利息、建物の保持費用、賃貸料)、および製造者のマークアップが含まれる。
鉱工業生産指数
毎月
10日前後
ドイツ連邦統計局 建設業も含む鉱業、製造業の生産動向(他国は建設業を含まない)。総合、製造業・工業、エネルギー、建設業の4つのカテゴリーの生産動向を、基準年を100として指数化したもので、基準年は5年ごとに改定される。季節調整済値。
フランス
毎月 フランス国立統計経済研究所
(INSEE)
2015年を100としてインデックス化。建設業も含む。翌々月中旬に発表。
毎月
10日前後
  前々月のデータを発表。
ユーロ圏 毎月 欧州委員会統計局
(Eurostat)
指定された月の工業製品の量と産業部門の活動量を前月と比較して測定。季節調整済。製造業、鉱業および公益事業が含まれ、建設業は含まれない。
失業率
ユーロ圏 毎月月末 欧州委員会統計局
(Eurostat)
フルタイムとパートタイム雇用、雇用労働と自営業を含む。失業者は、現在就業可能で積極的に仕事を探しているが雇用されていない15歳から74歳までの人として定義。 ユーロ圏全体の失業率よりも、加盟各国特に周縁国の失業率には注目したほうがいい。スペインでは若年層の失業率は高止まりしている。失業問題は移民問題と絡めて政治問題になりやすく、ポピュリズム政党の躍進など欧州統合に対する不安の火種となりやすい。
失業率・失業者数 ドイツ 毎月
翌月の上旬、下旬
ドイツ連邦統計局 失業者数を労働力人口で除した数値。ドイツでの失業者の定義は、15歳以上で仕事に就いておらず、少なとも3ヶ月間・週20時間以上の労働を望み、求職登録をした者。発表は翌月初(労働力調査:LFS)、季節調整値は翌月末。四半期ごとにも公表。
失業率・雇用統計 毎月中旬 イギリス国家統計局
(ONS)
失業保険申請件数、雇用者数、失業率、労働参加率など。「仕事がなく、過去4週間に求職し、2週間以内に就職可能」または「仕事はないが、就職が決まっており、2週間以内に就労開始」の16歳以上の人数を失業者として定義。前月のデータを発表。
平均週給、総賃金 (ボーナスを含む) 毎月 英国家統計局
(ONS)
推定総給与の経済全体での割合を全従業員数で割ったもの。イングランド銀行と大蔵省が労働市場のインフレ圧力を測定し、賃金上昇を測定するために使用されている。
GDP
☆☆☆
ドイツ 四半期毎 ドイツ連邦統計局
(DStatis)
連邦統計局が発表するが、季節調整がされていない。季節調整後の計数は、ドイツ連銀が1ヵ月後に発表。
GDP
☆☆☆
ユーロ圏 四半期毎 欧州委員会統計局
(Eurostat)
翌四半期の最終月に速報値を発表。その翌月に改定値が発表される。
労働コスト ユーロ圏 四半期毎 欧州委員会統計局
(Eurostat)
指標はインフレを評価して消費支出の伸びを予測し、ユーロ圏の全体的な経済発展を評価する。各四半期の最終月に速報値を発表。その後月次で改定値が発表される。
製造業受注指数
毎月
翌々月の上旬
大蔵省 製造業の新規受注動向を、国内・輸出・総合の3系列で発表(1995年=100)。国内動向は設備投資の、輸出動向は輸出そのものの先行指標として注目される。
製造業稼働率 毎月
翌々月の上旬
Ifo研究所 国内産業のインフレの潜在的な圧力を測る指標としてよく利用されている。
小売売上高
毎月
翌月の下旬
ドイツ連邦銀行 個人消費の基本的な指標。百貨店やスーパーなどの小売・サービス業の月間売上高を集計。
毎月
15日前後
国家統計局
(ONS)
百貨店やスーパーなどの小売業者の売上額を指数化したもの。前月データを発表。
ユーロ圏
毎月
翌々月の上旬
欧州委員会統計局
(Eurostat)
ユーロ圏の百貨店やスーパーなどの小売・サービス業の月間売上高を集計したもの。
消費支出 毎月 フランス国立統計経済研究所
(INSEE)
フランス国民が商品やサービスを購入する費用、生活費。
鉱工業生産 毎月
翌々月の上旬
大蔵省
ドイツ連銀
原計数は大蔵省が、季節調整値はさらに1ヵ月後にドイツ連銀が発表する。
ユーロ圏 毎月
翌々月の下旬
欧州委員会統計局
(Eurostat)
鉱工業部門の生産動向を指数化したもの。製造業、鉱業、公共事業(電気・ガス)の生産動向を、基準年を100として指数化したもので、基準年は5年ごとに改定。
建設部門生産高 ユーロ圏 毎月 欧州委員会統計局
(Eurostat)
建設部門生産高は、指定された月の前月と比較したユーロ圏建設部門の生産量と活動量。計算には民間部門と公共部門の建設が含まれる。
RICS住宅価格判断 毎月 英国王立チャータード・サベイヤーズ協会 専門家の意見に基づいており、住宅価格に関する物価上昇率から下落を報告した測量者の割合を引いたもの。
ライトムーブ住宅価格 毎月 大手不動産会社ライトムーブ社 ライトムーヴ社のWEBサイトで掲載された住宅広告の提示価格に基づいた指数。イギリスの住宅市場の約半数を占めるデータをもとに集計。最終的に取引された価格ではないことに注意。
ネーションワイド住宅価格 毎月末 ネーションワイド 英国最大の住宅ローン貸し手の1つであるネーションワイド社の住宅ローン記録に基づいた指数。当月データを発表。
ハリファックス住宅価格指数 毎月初め ハリファックス 英国最大の住宅ローン貸し手の1つであるハリファックス社の住宅ローン記録に基づいた指数。
ECB月報
☆☆
ユーロ圏 毎月 欧州中央銀行
(ECB)
金融政策の運営・判断の背景にある金融・物価等に関する分析が解説されている。1回目の定例理事会開催日の1週間後。
欧州中央銀行(ECB)
金融政策会合報告書
☆☆
ユーロ圏 政策会合の4週間後 欧州中央銀行
(ECB)
ECB金利決定の発表の4週間後に公表。金融市場の概観、経済的および金融的発展の評価も含む。概観の後には、金融政策に関する議論の要約が続く。この公表の目的は、規制当局の決定を明確にすること。
内容によっては、その公表はユーロに短期的な影響を与える可能性がある。
イングランド銀行インフレ予想
☆☆
四半期毎 イングランド銀行
(BOE)
BOEインフレ期待は、翌年の物品とサービスの価格の予想変化を測定している。指数の作成は、数千人の消費者の調査に基づく。イングランド銀行は、四半期ごとにインフレ報告とともに調査結果を公表。この数字は、BOEのインフレ予測に含まれていて、目標の2%に対応しているかどうかを示している。
貿易収支
☆☆
毎月
ドイツ連邦統計局 国際収支統計は、IMFの国際収支提要に準拠している。原型数は翌々月上旬、季節調整値はその翌月に発表される。ユーロ圏で一番大きな経済国のドイツの貿易統計は加盟各国のなかでも最も注目される。
貿易収支 ユーロ圏 毎月 欧州統計局
(EuroStat)
ユーロ圏における商品とサービスの輸出入の差額。貿易収支のユーロに対する影響はあいまい。
貿易収支 毎月 フランス国立統計経済研究所
(INSEE)
ユーロ圏で二番目に大きな経済国のフランスの貿易統計は加盟各国のなかでも注目される。前々月のデータを発表。
国際収支 ユーロ圏 毎月 欧州統計局
(EuroStat)
前々月のデータを発表。
経常収支
ユーロ圏 毎月 欧州中央銀行(ECB) 貿易収支(他国との輸出入の差額)、所得収支(国境を越えた雇用者報酬や、対外直接投資の投資収益の金額)、経常移転収支(政府開発援助のうち、医薬品など対価をともなわない現物援助で利用した金額)、サービス収支(国境を超えて旅行、運送、通信、建設、保険、金融取引で利用した金額)を集計したもの。
ユーロ加盟国それぞれの経済分析を行う際、注目される指標。ユーロ圏全体よりも加盟各国のデータを比較する必要あり。
経常収支 四半期 国家統計局
(ONS)
純貿易収支(輸出入商品とサービスの差額)、外国投資からの純利益、および純移転支出。
マネー・サプライ ユーロ圏 毎月
第4週
欧州中央銀行(ECB) ECBの通貨統計定義:
M1: 市中の貨幣+夜間金庫
M2: M1 + 満期2年までの定期預金 + 3ヶ月までに償還される口座
M3: M2 + 現先取引+ マネー・マーケット・ファンド(MMF) + 2年以内の債券
マネーサプライは物価と深い関係があり、通常は他の条件が変わらなければ、マネーサプライの伸びが高く(低く)なると、物価の伸びも高まる(低くなる)傾向にあると考えられている。このため、欧米の中央銀行では金融政策の中間目標として、マネーサプライの動向が注視されている。M3に注目。
マネー・サプライ 毎月月末 英国中央銀行
(BOE)
前月のデータを発表。M4に注目。

欧州の経済指標で注目すべきは、最大GDPを誇るドイツの個別経済指標になります。欧州統計局が発表するユーロ圏の経済指標もECBの政策判断に利用されることから注目する必要があります。

ドイツの注目すべき経済指標

IFO経済研究が発表する「Ifo景況指数」※注

CPI(消費者物価指数)

鉱工業生産

※注)IFOサーベイ
ドイツで最も注目されている経済指標のIFO景況感指数ですが、2018年4月発表の景況感指数から集計方法が変更されました。これまではサービス業の景況感指数は別の指数として発表されていましたが、サービス業も含めた指数として発表されることになりました。欧州におけるサービス業の重要性が増していることによる変更とのことです。製造業は61%から30.2%へと構成は大きく下がります。またサービス業の構成が50.1%と全体の半分を占めることになりました。
 同時に、指数自体の基準時点を2005年から2015年へと変更しました。これにより新IFO指数は、旧来のIFO指数より10ポイント程度下がっています。2018年3月の指数は、114.7から103.2に変更されています。IFOは、景況感が悪化しものではなく、単に基準時点を変更したことによると発表しています。

IFO景況感指数:セクターの配分変更

旧集計 新集計
製造業 61.0% 30.2%
建設業 12.1% 6.0%
卸売業 14.5% 7.1%
小売業 12.4% 6.2%
サービス業 0% 50.5%

ユーロ圏で注目すべき経済指標

HICP(消費者物価指数)

消費者信頼感指数

企業信頼感指数

各国の経常収支:
ヒト・モノ・資本が自由に移動できるユーロ圏では、経常収支が大きく変化します。 資本の移動が読み取れるため、貿易収支よりも経常収支が重視されるようです。各国別のデータに注意が必要です。

雇用統計:
北側だけでなく南側諸国の動向にも注意。若年層の失業率にも注目。

ECB月報

ECBの金融政策会合の報告書

欧州(ユーロ圏)の金融政策

 単一通貨ユーロが誕生して以降、ユーロ圏の金融政策は、欧州中央銀行(ECB)及び各国中央銀行からなる欧州中央銀行制度(ESCB)を通じて単一の金融政策として行われています。各国中央銀行は、定められた金融政策方針に従って、各国内で金融政策を実施することを任務としています。ESCBは、ECB及びEU加盟国中央銀行から構成され、ECBの意思決定機関である政策理事会及び役員会により運営されています。

HICP(消費者物価指数)

 金融政策の運営方針

 物価の安定が経済成長や雇用の増大に資するとの考えの下、金融政策の第一義的な目的は、物価の安定を維持することです。ただし、欧州中央銀行(ECB)は物価安定の目的に反しない限りにおいて、欧州共同体の全般的な経済政策(経済成長や雇用の増大等)を支持することになっています。また、物価の安定とは、「2%未満であるがその近辺(below but close to 2%)」と定義されています。物価の基準として使用されるのは、ユーロ圏の消費者物価指数(Harmonised Index of Consumer Prices; HICP)の総合指数です。このHICPの前年比伸び率が2%をやや下回る水準になるよう、様々な政策や調整を行います。金融政策は、ECB内に設置された政策理事会の策定した指針のもとに、役員会が具体的な指示を作成して各国の中央銀行に送るという流れで実施されます。各国中央銀行は、この指示に基づいて、金融政策の中心となる公開市場操作等を実施します。
 金融政策の決定においては、さまざまな情報をもとに、経済分析とマネタリー分析の2本立てアプローチを採用しています。

欧州中央銀行(ECB:European Central Bank)

住所:フランクフルト・アム・マイン、ドイツ

役員会

役員会は、総裁、副総裁、理事(4名)から構成(合計6名)されています。

役職 氏名 任期満了日 前職
総裁 マリオ・ドラギ 2019年10月31日 イタリア中銀総裁
副総裁 ルイス・デドンギス 2026年5月31日 スペイン経済大臣
専務理事 ブノワ・クーレ 2019年12月31日 フランス財務省国庫総局次長
専務理事 サビーヌ・ラウテンシュレーガー 2022年1月26日 ドイツ連邦銀行副総裁
専務理事 イブ・メルシュ 2020年12月14日 ルクセンブルグ中銀総裁
専務理事 ピーター・プラート 2019年5月31日 ベルギー中銀理事

歴代総裁

ウィム・ドゥイセンベルグ 1999年1月~2003年11月 元オランダ中銀総裁
ジャン=クロード・トルシェ 2003年11月~2011年11月 元フランス中銀総裁

政策理事会

政策理事会は、役員会メンバー6名とユーロ圏(ユーロ導入国)の中央銀行総裁19名から構成(合計25名)され、金融政策を決定する権限を有するECBの最高意思決定機関です。以前は2週間ごとに開催され、月の1回目の理事会で政策金利が決定されていました。2015年以降のECB政策理事会は、(1)政策理事会の意思決定方式の輪番制の導入、(2)開催頻度の変更(1カ月1度→6週間に1度)、(3)議事録の公開の開始という3つの点で変更がされています。情勢の分析と政策変更に必要なコンセンサスの形成に今までより長い時間を確保できるようになりました。

一般理事会は、ECB総裁及び副総裁、ユーロ圏・非ユーロ圏の各国中央銀行総裁(28名)から構成(合計30名)されるユーロ圏と非ユーロ圏の中央銀行との協力の場です。

欧州連合理事会は欧州中央銀行総裁、副総裁およびほかの役員会の役員を指名する権限を持っています。指名された候補者はまず欧州議会の承認を受けなければならず、続いて欧州連合理事会の承認を経て、各役員の担当分野を決定します。欧州中央銀行総裁は法の定めにより、欧州議会総会において年間報告書を提出します。さらに総裁および役員会の代表は年4回、欧州議会経済通貨委員会において報告することとされています。このような報告は欧州議会または欧州中央銀行の求めに応じ定例外に行うことができます。

金融政策

金融政策は、主に①公開市場操作、②常設ファシリティ、③最低準備預金制度の 3 種類があります。

①公開市場操作は、金融機関が保有する国債等を担保に各国中央銀行が資金を貸し出します。期間は、1週間(Main Refinancing Operation :MRO)と3か月(Long-Term Refinancing Operation :LTRO)が基本であり、MRO は政策理事会が毎月発表する市場介入金利での貸し出しになります。

②常設ファシリティには、a)限界貸付と b)中銀預金があり、a)限界貸付は、金融機関が市場で資金調達ができないとき、ECB が各国中央銀行経由、オーバーナイトの貸付を行うものです。b)中銀預金は、金融機関が市場での借り手が存在しないときに、各国中央銀行へオーバーナイト預金を行います。

③最低準備預金制度は、市場金利の安定のために、ECB の指示に基づき、金融機関に各国中央銀行へ預金をさせ、市場から資金を吸い上げる仕組みです。

主要リファイナンス・オペ金利

ユーロシステム(ECB及びユーロ圏内の中央銀行)が定期的に行う公開市場操作において金融機関が入札可能な下限金利となるもので,ECBの主要政策金利。(EONIAの管理)

預金ファシリティ金利

金融機関が,手元資金をオーバーナイトでECBに預け入れる際の金利。(EONIAの下限)現状:マイナス0.4%。

限界貸付ファシリティ金利

金融機関が,急な資金需要が生じた際に,オーバーナイト資金をECBから借り入れる際の金利。(EONIAの上限)

※EONIA(Euro overnight index average)とは、ユーロ圏の大手銀行により報告される無担保オーバーナイト金利の加重平均

資産購入プログラム

長期化する低インフレのリスクに対処すべく,公的部門と民間部門の資産を購入するもの。購入適格とされた社債を購入する企業セクター購入プログラム(CSPP)や中央銀行や地方政府等が発効する公債を購入する公的セクター購入プログラム(PSPP)、カバードボンド購入プログラム(CBPP3)、ABS購入プログラム(ABSPP)から構成される。なお,PSPPの買入対象資産の残存期間の下限は本来2年だが,現在は1年まで拡大されている。なお,同プログラムは,2017年3月末まで毎月800億ユーロ分の資産が購入されていたが,同年4月以降,毎月600億ユーロに,2018年1月からは毎月300億ユーロにそれぞれ減額された。

(参考) 貸出条件付き長期資金供給オペ(TLTRO):
民間金融機関が国債等の担保を差し出し,ECBが資金を供給するものです。期間4年のTLTROを2016年6月から17年3月までに,四半期ごとに1回ずつ,計4回実施しました。

資産購入に関するガイダンス(2018年3月末現在)

①最小限の実施期間(2018年9月末まで)
②インフレ率の持続的な調整が確認されるまで実施する(sustained adjustment in the path of inflation; SAPI)。因みに、ECBの物価目標は中期的なインフレ率が2%未満だが2%近傍とされています。

SAPI達成の判断の検討項目

収斂:中期的に物価目標に向け上昇するという見通しが今日できる

自信: 見通しが外れるというリスクも減少している

頑健性:その見通しが緩和策を縮小させても大丈夫だということ

SAPIが達成されれば、資産購入は中止され、利上げ局面に入っていくとされています。SAPIの判断には、各種インフレ率、景況感指数、設備稼働率などの経済指標には、注意が必要となるでしょう。
※欧州中央銀行(ECB)は2018年6月14日の理事会で、量的緩和を2018年9月以降は月間150億ユーロに縮小し、年内に終了する方針を決定しました。

欧州中央銀行(ECB)のフォワード・ガイダンス

(中央銀行が金融政策の先行きを明示する指針)

政策内容 現状 利上げの時期や利上げのペースに関するガイダンス
物価目標の設定
資産購入 毎月300億ユーロの資産購入は、2018年9月、必要があれば、それ以降も行われることが意図されている。いずれの場合でも、政策理事会がインフレ目標と整合的なインフレ率の持続的調整を確認するまで続けられる。 物価目標と政策手段に関する関連付け
再投資 資産購入プログラムで償還期限を迎えた債券の再投資について、純資産購入を終えて以降も当分の間実施し、必要な限り長期にわたり実施する。 大きな変更なし

ECBの出口戦略

世界金融危機以降、先進国の中央銀行は積極的な金融緩和策をとってきました。政策金利を引き下げると共に、市場から債券など資産を購入して、大量の資金を金融市場に供給するプログラム(量的金融緩和)を行ってきました。しかし、米国は出口戦略を着々と実行している段階になっていますが、欧州では、出口戦略はまだ手探りの段階です。 ドラギ総裁は2017年6月シントラ(ポルトガル)での講演で、ユーロ圏ではデフレの脅威がリフレに置き換わったと発言し、政策判断の軸足が超緩和政策からの出口へシフトしていることを印象付けていました。欧州中央銀行(ECB)は、2017年10月、大規模な債券購入プログラムを2018年9月まで延長するとともに、2018年1月以降の購入額を月額600億ユーロから300億ユーロに半減することを発表しました。  ECBでも、FRB同様、市場の混乱を回避したいという思惑は強く、市場との対話を十分に図ってきました。ドラギECB総裁は、景気動向に関しては注意深く慎重な見方を語り、硬軟織り交ぜながらも、欧州経済の景気拡大ペースについて強まりつつある自信と、インフレ率がターゲットである2%には届かないことへの疑念との間で、微妙なバランスを取っている状況です。一方、一部のECB幹部は、欧州の経済回復は、力強さを伴ってきており、これが金融政策に適切に反映されていないことへの懸念を表明しています。  タカ派とされるECBの量的緩和プログラムに批判的な立場をとるドイツ連邦銀行のワイトマン総裁は、ECBがこの資産購入プログラムの終了日を明示的に設定すべきであるとの考えを表明していました。2017年10月のECB理事会では、債券購入の終了日を設定するかどうかや、再延長する選択肢を残すかどうかについては理事の間で意見が分かれたようです。ワイトマン氏も、債券買い入れプログラムの減額の早期実施を主張したと言われています。この理事会の結果としては、ECBは資産買い入れを2018年9月まで継続することを強調しましたが、これは、市場の過剰な反応を回避するための一手でもあったと言われています。  2017年12月理事会の議事要旨では、政策スタンスに関する声明文の文言やフォワード・ガイダンスについて今年の早い段階で再検討する点と後々の突然や無秩序な修正を回避するためにも経済データの改善に応じてガイダンスを徐々に変更することが重要であるとの見解が示されていました。2018年1月の理事会でガイダンスの修正が見送られたため、スタッフ見通しが発表され、「今年の早い段階」に該当しそうな3月の理事会での文言修正の是非に注目が集まっていました。  2018年3月の理事会では、資産買い入れの再拡大の根拠となる「緩和バイアス」を声明文から削除しました。あくまで現状に即さなくなったためと説明し、フォワード・ガイダンスの修正に向けた第一歩であり、さらには先行きの資産買い入れ終了や利上げ開始と結び付けられることを警戒していました。  2018年1月以降、債券買い入れ額の減額を行ってきましたが、10月以降の買い入れ方針を決定するのはスタッフ見通しの発表月である6月が有力との説もあるなか、年初以降の欧州経済指標に軟化が見られることから、4月の理事会では、今後の金融政策についての議論は行われなかったようです。  ECBは、 今後秋のテーパリング(段階的な資産買い入れ縮小)と来年の利上げ開始に向け、政策転換の地ならしが必要な時期に差し掛かっていますが、足元の経済指標の落ち込みにより、いったん足踏み状態となっています。一部には資産買い入れ額の再増額という声さえ聞こえてくるようになっています。昨年は欧州の出口戦略に注目が集まり、かつオランダ、フランス、ドイツ、オーストリアなどの選挙でポピュリズム政党の躍進はあったものの、保守政党が勝利したことで、ユーロ高となりました。ただし、ユーロ高による輸出の伸び悩みや米国のトランプ大統領が打ち出している通商政策の影響も危惧されています。今後欧州の出口戦略は欧州の景気動向に左右されることでしょう。また、5月から6月にかけて欧州議会選挙が欧州全体で予定されていることから、再度ポピュリズム運動が再燃する可能性があり、政治動向についても注意が必要でしょう。

ユーロ圏の市場の特徴

ユーロ圏の市場の特徴ですが、共通通貨を導入しているため為替相場がありません。そのため、金利と財政でしか加盟各国間の資本調整することができません。ユーロの為替を予想する場合には、最大の経済大国であるドイツを中心に経済は動いていると考えるとわかりやすいです。 国債で言えば、ドイツを中心に、各国の信用力、経済力で上乗せ金利が決まっています。信用力が落ち始めると、信用力のない順番で上乗せ金利が大きくなっていきます。1980年代以降の信用収縮と信用膨張の繰り返しの中では、毎回同じような順番で危機が拡大していきました。悪い順番で行くと、毎回、周縁国(ギリシャ、スペイン、ポルトガル、イタリア、アイルランド)、その後さらに状況が悪かった場合は、ベルギー、フランスと続きます。最後の砦はオランダ、ドイツです。 過去は、危機が起これば、周縁国の通貨の切り下げ調整により周縁国の輸出産業が回復の牽引役となってきましたが、単一通貨ではこの方法が取れません。単一通貨である限り、欧州は統合度合いを深化させるしかありません。数年前の欧州債務危機の際には、EUはECBと一緒に旗振り役となって経済対策を主導しました。お金持ちの優等生足らんとしているドイツは反対していますが、いま議論されている財政の統合もますます議論が進んでいくことでしょう。過去、欧州統合に問題があった場合、フランスとドイツが旗振り役となって、さまざまな問題を解決してきました。今後も、フランス、ドイツが主導して欧州の統合は深化していくでしょう。

欧州の相場の動きの特徴について

米国系と欧州系双方の金融機関で相場に関する仕事を25年以上経験し、米国と欧州では相場の動きに大きな違いがあると感じています。スポーツで言えば、欧州がラグビーで、米国はアメリカン・フットボールという感じです。 欧州がラグビーといったのは、パスが前に出せないという点です。いろんな情報を織り込んで、織り込んで、実際の経済指標やイベントでポジションを上乗せするのではなく、利食ってポジションを落とすファンド・マネージャーが多いと感じてきました。 一方、米国がアメリカン・フットボールといったのは、攻守ラインががっぷりよつに組んで拮抗している中、ある事象(経済指標やイベントなど)が起こった際には、いきなり相場が飛んでしまうことがよく起こるからです。アメリカン・フットボールでロングパスがいきなり出てくるという印象です。