ファンダメンタル分析(アメリカ)

2019年7月3日更新

経済活動等の状況を示す基礎的な要因をもとに分析することです。
例えば、一国経済を分析する際の基礎的条件は、経済成長率、物価上昇率、失業率、財政収支の赤字(黒字)率、経常収支の赤字・黒字額などの指標を使います。また、広義の意味において政治状況や地政学的分析も含めることもあります。

株式においては、企業の財務状況や業績状況のデータをもとに分析し、PER(株価収益率)、PBR(株価純資産倍率)、ROE(株主資本利益率)などが代表的な指標として株式の本質的価値(ファンダメンタル・バリュー)を分析します。企業のファンダメンタルズ分析では、株式の本質的価値と市場価格にギャップが存在しても、いずれは本質的価値が市場で実現されるという考え方を重視します。ファンダメンタルズは、突発的な出来事を除くと一朝一夕に変化するものではなく、また、投資家にはなかなか伝わりにくいものです。相場動向を予測するには、日々変動する株価の過去の値動きの傾向をもとに売買のタイミングを捉えるテクニカル分析も、ファンダメンタルズ分析と並行して使われます。

またファンダメンタル分析はトップダウン、ボトムアップ、株式の場合バリュー投資、グロース投資などの考え方があります。ここでは為替の分析なので、注目すべき主要各国の経済指標を見ていきましょう。

注目すべき経済指標(米国)

☆は重要度(☆☆☆は最重要、☆☆は重要、☆は注意、無印は参考)

先行指標 頻度 発表元 解説
景気先行指数(DI) 毎月25日~月末 カンファレンス・ボード社(全米産業審議会) 労働、企業業績、株価指数、マネー・サプライなど10項目の指標から算出したもの。ただしすでに発表された経済指標のまとめなので、予想するというよりは参考にすべき数字。
マネー・サプライ 毎週木曜日 FRB 以前、M1,M2,M3の3つの統計を公開していたが、2005年11月10日に2006年3月23日分からM3の公表を中止と発表。M1は、一般に支払いの為に使われる通貨のことで、現金と当座預金の合計。M2は、M1に流動性の高い預金口座(普通預金及び小額の定期預金)を足したもの。1970年代にはマネー・サプライを金融政策運営上の中間目標に位置付けていたが(78年施行のハンフリー・ホーキンス「H-H法」法でFRBは年2回マネー・サプライの伸び率の目標を議会に報告することが義務化)、1980年代から1990年代にかけて、マネー・サプライを中間目標に位置付ける政策運営を止めるようになった。2000年7月にH-H法失効により、FRBは政策目標にしないと決定した。1980年代のボルカーFRB議長時代は、マネー・サプライが最も市場を動かす経済指標として注目されていた時期もあった。
有名な投資家ジョージ・ソロス氏は、通貨供給量と為替相場の関係性に注目し、2つの国の「ベースマネー」(マネタリーベース)の差と為替レートをグラフにした「ソロス・チャート」を参考にしたと言われている。一部の通貨トレーダーに利用されているとのこと。
商工業貸付
(C&Iローン)
毎週(残高)
四半期(融資基準アンケート)
FRB FEDが全米銀(大手、中小銀、国内銀、外銀)の融資状況を取りまとめたもの。また、四半期毎に融資基準についてのアンケート調査結果も発表。2016年末以降、商工業向け融資は伸び悩んでいる。
失業保険申請件数
毎週木曜日
(NYT 8:30)
労働省 失業保険の申請件数。発表は州別と米国全体。就職活動中の失業保険の申請もカウントされるので、同時に雇用が増えていれば新規失業保険申請件数の増加は必ずしも直接景気悪化に繋がるとは限らない。
住宅着工件数
(住宅着工許可件数)
毎月中旬
(NYT 9:30)
商務省 一戸建て、集合住宅の着工件数をそれぞれ発表。住宅着工件数と同時に、その先行指標である住宅着工許可件数が公表される。住宅価格との関係において特に注目される。リーマンショック前は特に注目度が高かった。
耐久財受注
毎月22日頃 米国商務省経済分析局(BEA) アメリカ国内の主要な製造業者4,000社の耐久財に関わる動きで、出荷・在庫・新規受注・受注残高が発表される経済指標。耐久財とは3年以上の使用に耐えうる消費財のことであり、代表的な商品には、自動車や航空機、家電製品、家具など。製造業新規受注よりも速報性が高い。
製造業新規受注
毎月上旬
(NYT 10:00)
商務省センサス局 出荷・在庫・新規受注・受注残高が発表される経済指標。年間の出荷が5億ドル以上の製造業者からの報告に基づいて集計・発表。航空機(輸送用機械)を除いた「非国防資本財受注」が特に注目。
NAHB住宅市場指数 毎月中旬 全米住宅建設業者協会
(NAHB)
全米住宅建設業者協会に加盟する住宅建設業者に対して、今後6カ月の住宅販売の予測アンケートを実施し、下記の式から数値を算出。
[(良いと答えた比率)-(悪いと答えた比率)+100%]÷2。50を基準に上回れば、住宅市場に明るいと判断。
景況感指数 頻度 発表元 解説
ISM製造業景況指数
☆☆
毎月/第1営業日 ISM(供給管理協会) 0から100までのパーセンテージで表し、50%を景気の拡大・後退の分岐点として、50%を上回ると景気拡大、50%を下回ると景気後退を示している。製造業350社の購買・供給管理責任者を対象に、各企業の受注や生産、価格など10項目についてアンケート調査を実施。良い・同じ・悪いの三択の回答結果を集計し、季節調整を加え新規受注・生産・雇用・入荷遅延・在庫の5つの指数と、ISM製造業景況感の総合指数を算出。
ISM非製造業景況指数
毎月/第3営業日
(NYT 11:00)
ISM(供給管理協会) 非製造業300社の購買担当役員に対して4つの項目について景況感を良い・変わらない・悪いの3択でアンケートした結果を集計・発表したもの。0~100で50を分岐点とする。
フィラデルフィア連銀指数 毎月第3木曜日 フィラデルフィア連銀 アメリカ北東部のペンシルバニア州、ニュージャージー州、デラウエア州の製造業関連の景況感や経済活動を示す経済指標。非農業部門の就業者数、失業率、製造業の新規受注、製造業の平均賃金、個人所得など11の項目について、1カ月前と比較して、現在と将来(6カ月毎)の景況感を良い・同じ・悪いの3択の回答で集計したもの。
NY連銀製造業景況指数 毎月15日
(NYT 8:30)
ニューヨーク連銀 ニューヨーク州にある約200社の製造業経営者を対象に、新規受注、受注残、雇用、入荷、在庫など9項目について前月と比較した現状と、6か月後の先行き見通しを回答してもらい、それを集計したものを指数にしたもの。ゼロを分岐点とした指数。
シカゴ購買部協会景気指数 毎月月末
(NYT 9:45)
シカゴ購買部協会 イリノイ州・シカゴ(イリノイ、インディアナ、ミシガン)の購買担当役員200名を対象に、1ヶ月前と比較した景況感をアンケート形式で調査・集計をおこない、その景況感を指数化したもの。50を景気の拡大・後退の分岐点とする。集計・発表しているキングスベリー・インターナショナル社は、契約を結んだ一部の投資家に限り、正式発表の前に数値を確認できるサービスを提供。
ミシガン大消費者信頼感指数 毎月10日前後の金曜日 ミシガン大学 ミシガン大学サーベイ・リサーチセンターが調査・発表している経済指標。調査は、500世帯(速報値は300世帯)に対して景況感・雇用などの項目について尋ねた消費者マインド(楽観もしくは悲観)のアンケートの回答結果を、1966年を100として指数化してあらわしたもの。
消費者信頼感指数
毎月25日~月末 コンファレンスボード(全米産業審議会) 調査対象は5000人。1985年を100として指数化。現状(経済、雇用)と6カ月後(経済、雇用、所得)の景況感についてアンケート調査を行い、現状の経済と雇用に関する2項目の平均を「現状指数」、経済・雇用・所得の先行きに関する3項目の平均(季節調整)を「期待指数」として、この5項目の平均値で発表。
一致指数 頻度 発表元 解説
雇用統計
(非農業部門雇用指数:NFP)
☆☆☆
毎月第1金曜日
(NYT 8:30)
労働省労働統計局 民間企業や政府機関などの給与支払い帳簿を基に集計され、米国の雇用情勢を表すものとして注目度が高い指標。毎月12日を含む週での状況を調査。非農業部門に属する事業所(対象事業所:40万社、従業員4700万人:全米の約1/3を網羅)の給与支払い帳簿を基に集計。自営業、農業従事者は含まない。毎月15~20万人程度の増加が、労働市場における景気回復の目安。
雇用統計
(失業率)
☆☆
毎月第1金曜日
(NYT 8:30)
労働省労働統計局 失業者数を総労働力人口で割ったもの。約6万世帯の調査対象。サンプリング数は非農業部門の雇用者数調査よりも少ない。失業者の定義:過去4週間に仕事を探していたもののうち仕事があればすぐ就業できるひと(レイオフ中の人も含む)。
雇用統計
(1時間当たり賃金)
☆☆☆
毎月第1金曜日
(NYT 8:30)
労働省労働統計局 非農業部門の雇用者数調査と同じく事業所調査。賃金の伸びを発表。
ADP雇用統計
毎月上旬
雇用統計の2日前
NYT
ADP社 「ADP社」という民間の給与計算会社が発表。数千万人規模の給与計算データを基に算出された非農業雇用者数などの予測。雇用統計に近い算出方法で計算されるため信頼性・注目度が高い指標とされる。
鉱工業生産
毎月14~17日
(NYT 9:15)
FRB コンピューター、電化製品、自動車など鉱工業全体の生産高を示した指標。他の経済活動全般の状況が推測できる。GDPの統計が四半期毎なのに対して、鉱工業生産指数は毎月発表される為、景気実態を把握する上で速報性の高いもので非常に注目されている。毎月発表されるため速報性には優れているが振幅が激しいために注意が必要。小売売上高と合わせて数値を見ると、より消費動向を深く分析できる。
設備稼働率
毎月14~17日
(NYT 9:15)
FRB 鉱工業生産と同時に発表される。設備がどのくらい稼働しているのかがパーセンテージで表され、設備稼働率80%を超えると経済の活性化に繋がると言われている。
小売売上高
毎月第2週
(NYT 8:30)
商務省 百貨店、スーパーマーケットやコンビニをはじめとする小売業者約5,000社の売上額をまとめた指標。米国では個人消費がGDPのうち60%以上を占めると言われており、他の指標の予想にも使われる。
労働生産性
四半期毎
5日前後
労働省労働統計局(BLS) アメリカ国内企業の労働生産性を指数化した経済指標のこと。従業員1人当たりにかかる営業利益と人件費、減価償却費の合計である「付加価値額」を示す指標であり、「付加価値 ÷ 従業員数」で表され、投入した労働量と労働の結果である生産量の割合のこと。
新築住宅販売件数 毎月下旬
(NYT 10:00)
商務省 その月に販売された土地付きの新築住宅の件数。中古住宅販売件数と比べ先行性が高いとされる。
貿易収支
☆☆
毎月10日前後
(NYT 8:30)
米商務省 アメリカの貿易収支では輸出・輸入ともに工業製品だけではなく、サービス(保険、運賃、観光等)の取引も含まれている。日本と違い2か月前の統計が発表される。アメリカの貿易赤字は財政赤字と並んで「双子の赤字」と呼ばれるほど深刻な問題な問題です。そのため貿易赤字の金額が大きくなると、ドルが弱くなる考えられてドル売りが進むため、ドル売りの判断材料として、特に注目されている経済指標。
対米証券投資
毎月15日 財務省 国際収支の内訳の1つである証券投資とは、配当・利子などのインカムゲインや売却益に代表されるキャピタルゲインを得る目的で、外国の株式・債券を保有する投資のことを言い、その投資結果をまとめたもの。アメリカ国外からの投資のこと。国別の数字も発表。2か月前の統計を発表。
アトランタ連銀GDPナウ
ほぼ毎日 アトランタ連銀 ISM各種指数、雇用統計、住宅着工、貿易統計、建設支出、小売売上高+在庫、耐久財支出、PPI、卸売り売上、自動車販売、個人収入・支出、新築・中古住宅販売などの経済指標からアトランタ連銀のモデル(ダイナミック・ファクター・モデル)によって算出・発表されるGDP予想値。使用データの発表とともに更新されるのでほぼ毎日最新の予想値を公表している。
ナウキャスト(GDP予想)
毎週金曜日11:15(NY時間) ニューヨーク(NY)連銀 アトランタ連銀と同様、NY連銀からもGDP予想値が発表されている。NY連銀独自のモデルで計算されている。アトランタ連銀では使われていないADP雇用統計など、広範にわたる様々な経済指標のビックデータからカルマン・フィルタリング手法とダイナミック・ファクター・モデルを使って算出される。予想値は各GDPの修正値発表までの各四半期ごとに算出・発表されている。
シカゴ連銀経済活動(CFNAI)指数
毎月最終週の月曜日8:30(NY時間) シカゴ連銀 生産・収益、雇用・失業・時間、個人消費・住宅、販売・受注・在庫など85の経済指標から全米の経済活動をシカゴ連銀が指数化して発表している。
基調的インフレ率(Underlying Inflation Gauge;UIG)
毎月CPI発表日の午後2:30(NY時間)※FOMCブラック・アウト期間は終了後 ニューヨーク(NY)連銀・スタッフ・レポート NY連銀がスタッフ・レポートとして発表している基調インフレ指数。企業統計や雇用統計などインフレ指標以外のデータ(合計346項目)情報も取り込んだ全データセット(Full set data)と消費者物価構成品目のうち、長期的にみてノイズが少ない(基調的なインフレトレンドに寄与する)品目を取り出して(243項目)計算する価格指数(Prices-only)と呼ばれる2指標を計算・発表している。全データセットのほうが注目されている。
遅行指標 頻度 発表元 解説
GDP
国内総生産
☆☆☆
四半期毎。
前四半期の値を下旬に、速報値、修正値、確定値と1か月ごとに発表。
(NYT 8:30)
米国商務省経済分析局(BEA) 一定の期間内に対象となる国の中で生み出された商品、生産物、サービスの付加価値の総額のこと。実質GDP、名目GDP、PCE価格指数(GDPデフレーター:インフレ調整値)、コア指数。内訳は個人消費、設備投資、住宅投資、在庫投資、政府支出、純輸出(輸出、輸入)で、詳細の産業別のデータも公表される。FOMCのメンバーは四半期に一度物価見通しを公表しており、そこで物価の指標として採用されている指数がPCE価格指数とコアPCE価格指数。市場は速報値に最も反応する。
国際収支 四半期及び1年
商務省経済分析局(BEA) 一定期間における国の国際取引を記録した統計。財・サービス貿易収支、対外・対内投資による利子や配当の受払いを表す所得収支、さらに外国への援助や贈与など表す経常移転収支から成り立っている。アメリカは長期間にわたり経常収支が赤字であることが特徴(双子の赤字)。
消費者物価指数
(CPI)
☆☆
毎月13日頃
(NYT 8:30)
労働省労働統計局(BLS) 消費者から見た財・サービスの価格を示す。変動幅が大きいエネルギー・食品価格を除いたコアCPIが最も注目される。1982年の物価水準を基準として、年金や医療、保険などの社会保障のインフレ調整に利用されている。直接的な重要性は高くないが、金融政策の方向性に影響を与える場合ある。物価上昇を政策当局が懸念している局面では、注目度が急上昇。速報性はあまり高くない。
個人消費価格指数(PCE)
☆☆
毎月、月末
(NYT 8:30)
商務省経済分析局 消費者から見た財・サービスの価格。CPIとの違いは、CPIは品目別ウェイトが固定されているのに対して、PCEはウェイトが固定されていない。そのため、消費者が安いモノの購入量(比率)を増やした際はCPIはそれを考慮しないのに対して、PCEは考慮している。個人消費支出の物価動向を示すデフレーターは、経済の好調・不調を示すインフレ指標として非常に注目度が高い。特に、変動の激しい食品とエネルギーを除いたPCEコアデフレーターはFRB(連邦準備制度、米国の金融政策を決定)が最も重視するインフレ指標とされている。速報性は低い。
個人所得 毎月、月末
(NYT 8:30)
商務省 給与や賃貸収入、利子などの全ての所得を合わせた金額から、社会保険料を控除したあとの実際に個人が受け取った所得について調査・集計した経済指標。
生産者物価指数(PPI)
毎月中旬
(NYT 9:30)
労働省労働統計局(BLS) 製造業者の販売価格を調査・算出した物価指数。約10,000品目の生産者の出荷時点での価格を対象。「業種」「商品」「製造過程」に分類し、さらに「製造過程」を「原材料」「中間財」「完成品」に分類。「食品」と「エネルギー」を除いたものを「コア指数」と呼び、最も重視される。
中古住宅販売件数 毎月下旬
(NYT 11:00)
全米不動産業者協会(NAR) 全米を4つの地域に分けて調査。市場規模が新築住宅販売の約6倍の規模。中古住宅の売買契約がなされてから、2~3ヶ月遅れて計上されることが注意点。実際の市況からは数ヶ月遅れとなっている。住宅在庫も、販売に対する在庫比率として公表されるため、要注目。住宅系の指標は、住宅の資産価格効果に注目が集まっている局面では非常に注目される。
S&P/ケース・シラー住宅価格指数
毎月最終火曜日 S&P社 指数の計算方法を開発したエコノミスト
のカール・ケース氏とノーベル経済学賞受賞者のロバート・シラー氏から命名。アメリカの主要 10 1及び 20 都市2の1戸建て住宅価格指数(3ヵ月移動平均値)。高額物件を対象にしたジャンボローンや、信用度の低い人を対象にしたAlt-A、サブプライムローンなどの住宅ローンの融資を受けた物件の価格も含み、加重平均。高額物件の影響が出やすい。2ヵ月遅れで発表。全国住宅価格指数の発表は四半期ごと。
FHFA住宅価格指数 毎月下旬 連邦住宅金融局(FHFA) 住宅ローン専門の政府系金融機関である、ファニーメイとフレディマックから住宅ローンを受けた、または保証された、1戸建て住宅価格が対象。2ヵ月遅れで発表。

期待インフレ率

市場参加者(投資家等)が予想する将来の物価上昇率のことです。物価が将来どれくらい変動すると見ているかを示すもので、その代表的な指標として、普通国債(利付国債)と物価連動国債(物価に連動して元本が増減する国債)の流通利回りの差から求める「ブレーク・イーブン・インフレ率(BEI)」は注目されています。ただし、物価連動国債の利回り水準は物価変動の予想というよりは需給で利回りが大きく変動するので、参考値と利用したほうがいいでしょう。

また、5年金利スワップ(変動ー固定金利)の5年フォワード(5年先渡し契約の5年金利スワップ)金利も市場のインフレ予測値として活用している参加者もいます。インフレ・ターゲットの2%を割り込んでくると、中央銀行はデフレ防止のために金融緩和を実施すると分析する経済学者もいるようです。中央銀行(特にECB)はこの数値を注視しているようです。

過去のインフレ率の実績を加重平均して期待インフレ率とみなす方法、アンケート調査結果を一定の算式により数量化して先行きのインフレ率を予測する方法、過去のインフレ率のデータに時系列モデルを当てはめて先行きのインフレ率を予測する方法などもあります。

米国雇用統計

URL:https://www.bls.gov/bls/newsrels.htm#OEUS

重要性

米国の雇用統計は、米国労働省労働統計局が毎月第1金曜日のニューヨーク時間午前8:30に発表する世界で最も注目されている経済指標の一つです。東京時間では、米国が夏時間を採用している期間は21:30、冬時間は22:30になります。注目されている大きな理由は、米国の現状の経済状況をよく反映しているとされている点と、米国の金融政策に大きな影響を与えるとされているからです。米国の中央銀行(連邦準備制度:FRB)の金融政策の最大の目標は、最大限の雇用と物価安定の促進と法律で規定されています(※1)。前FRB議長のイエレン氏は特に労働経済学の専門家として知られ、経済状況を把握するのに特に雇用について重要視していました(※2)。

※1:連邦準備法(Federal Reserve Act) 第2条(a)項
The Board of Governors of the Federal Reserve System and the Federal Open Market Committee shall maintain long run growth of the monetary and credit aggregates commensurate with the economy’s long run potential to increase production, so as to promote effectively the goal of maximum employment, stable prices, and moderate long-term interest rates.
連邦準備制度理事会および連邦公開市場委員会は最大雇用、安定した物価、および適度な長期金利の目標を効果的に推進するために、経済の長期的な生産可能性に見合った長期的な通貨および信用枠の成長を維持するものとする。

※2:イエレン・ダッシュボード
米連邦準備理事会(FRB)第15代議長のジャネット・イエレンが金融政策を実行するにあたって重要視するとされる以下の9つの雇用関連指標のこと。米国のメディアがイエレン議長の講演、会見などを基に9つの指標に分類、報じたのが始まりとされる。
1.非農業部門雇用者数(Nonfarm payrolls)
2.失業率(Unemployment rate)
3.労働参加率(Labor force participation rate)
4.広義の失業率(U-6 underemployment rate)
5.長期失業者の割合(Long-term unemployed share)
6.退職率(Quits rate)
7.求人率(Job openings rate)
8.採用率(Hires rate)
9.解雇率(Layoffs and discharges rate)
それ以外に
・経済的理由でパート職にしかつけない人の割合
・現在仕事をすることが可能な労働者数
なども重視していたとされています。

非農業部門雇用者数

非農業部門雇用者数とは、農業以外の部門に属する事業者の給与支払い帳簿を基に集計された雇用者数のことで、最も注目される経済指標です。

一般的には雇用統計の数値がよければ、為替相場はドル買い・円売りに動き、株式は上昇、金利は上昇します。しかし、単純に判断できない場合もあり注意が必要となります。非農業部門の雇用者数で、重要なのは市場の事前予想 (コンセンサス) との比較で、事前予想からどれだけ上下に乖離するかがポイントとなります。

非農業部門の雇用者数の調査は、毎月12日を含む1週間に調査されます。調査対象は、非農業部門の各事業所で、給与を受け取っている人数を毎月調査します。60万超の事業所に相当する14万9000の非農業部門の事業所、政府機関を対象に調査を行っています。調査対象の数が多く、信憑性が高いとされています。前月と比べてどれだけ増えたか減ったかと発表します。毎月発表時には、過去2か月分が修正され、当月の数字だけでなく、過去の3か月分全体で評価されることもあります。

大手人材派遣会社のADP(Automatic Data Processing)社が同等の非農業部門の雇用者数を雇用統計の2日前に発表し、この動向を当月の雇用統計予想の参考とする市場参加者も見受けられます。調査対象も50万社の給与支払い名簿を対象とし、雇用統計と同様の調査処理を行っていることから参考にする参加者は多いようです。

過去にはフィラデルフィア連銀の景況指数(製造業雇用者数)、リッチモンド連銀製造業景況指数(製造業雇用者数)、NY連銀製造業指数(雇用者数)なども雇用統計の先行指標として注目されていたこともありました。

失業率

失業率も毎回注目される指標です。非農業部門の雇用者数と違い、毎月16歳以上を対象に6万世帯に家計調査が行われます。軍人は対象外です。調査は非農業部門の雇用者数と同じく12日が含まれる1週間で行われます。賃金が支払られた人、自営業として働いた人、家業・農業に従事し15時間以上働いた人、年齢、性別、人種など細かい内容が調査されます。失業者の定義は、仕事を持っていないが、働くことが可能で4週間仕事を探す行動をした人が対象で、雇用保険受給とは関係ありません。就業者と失業者の合計が総労働人口で、失業率は失業者数を総労働人口で割った数字です。

時間当たりの給料

時間当たりの給料(平均時給)もインフレ指標として重要視されています。非農業部門の雇用者数と同じく、各事業所への調査に基づいて計算されます。前FRB議長のイエレン氏は労働経済学の専門家で、労働起因のインフレを特に注視したとされていました。

金融政策

過去の為替変動を分析してみると、金融政策に絡んだところで、為替相場の変動は大きくなっています。特に、市場の意図しない発表や期待外れの発表内容となった時には、為替相場は大きく動いていました。金融政策自体は、経済全体の景気動向やインフレ動向などもろもろのファンダメンタルズを参考にして決定されます。経済指標を読み解くことは、つまり金融政策を予想するということになります。ここでは、アメリカの金融政策について触れておきます。

連邦準備制度(Federal Reserve System, FRS)

アメリカ合衆国の中央銀行は、連邦準備制度(Federal Reserve System, FRS)と呼ばれています。首都ワシントンD.C.にある連邦準備制度理事会(Federal Reserve Board, FRB)が全国に12ある連邦準備銀行(Federal Reserve Bank, FRB、地区連銀)を統括します。連邦議会の下にある政府機関ですが、予算の割当や人事の干渉を受けません。

注:合衆国政府は連邦準備銀行の株式を所有していません。各連邦準備銀行によって管轄される個別金融機関が株式を所有しています。個人や非金融機関の法人は連邦準備銀行の株式を所有できません。
連邦準備銀行(地区連銀)
第1地区:ボストン連邦準備銀行
第2地区:ニューヨーク連邦準備銀行
第3地区:フィラデルフィア連邦準備銀行
第4地区:クリーブランド連邦準備銀行
第5地区:リッチモンド連邦準備銀行
第6地区:アトランタ連邦準備銀行
第7地区:シカゴ連邦準備銀行
第8地区:セントルイス連邦準備銀行
第9地区:ミネアポリス連邦準備銀行
第10地区:カンザスシティ連邦準備銀行
第11地区:ダラス連邦準備銀行
第12地区:サンフランシスコ連邦準備銀行

連邦準備制度理事会(Federal Reserve Board of Governors)

連邦準備制度理事会が連邦準備制度の統括機関になります。14年任期の理事7人によって構成され、理事の中から議長・副議長が4年の任期で任命されます。議長・副議長・理事は大統領が上院の助言と同意に基づいて任命します。
金融政策の策定と実施を任務としており、また連邦準備制度の活動の最終責任を負っています。

歴代議長(最近のもの)

ポール・ボルカー 1979年8月6日~1987年8月11日
民主党カーター大統領時代に任命
アラン・グリーンスパン 1987年8月11日~2006年1月31日
共和党レーガン大統領時代に任命
ベン・バーナンキ 2006年2月1日~2014年1月31日
共和党ブッシュ大統領時代に任命
ジャネット・イエレン 2014年2月1日~2018年2月3日
民主党オバマ大統領時代に任命
ジェローム・パウエル 2018年2月5日就任
共和党トランプ大統領時代に任命

現在の連邦準備制度理事会メンバー

役職 氏名 就任日 任期 前職 タカ派/ハト派
議長 ジェローム・パウエル 2018/2/5 2028/1/31 カーライルの幹部、FRB理事 中立
副議長 リチャード・クラリダ 上院承認 '18/8/29 2018/9/17~ 2022/1/31 財務次官補(ブッシュJr.時代)、コロンビア大教授、PIMCO 中立(19年はハト)
経済・金融政策担当
副議長 ランダル・クオールズ 2017/1/31 2021/10/13 財務次官(ブッシュJr.時代)、
カーライル
中立
金融監督・金融規制担当
理事 ラエル・ブレイナード 2014/6/16 2026/1/31 財務次官補、ブルッキングス研究所、女性 ハト/中立
消費者・コミュニティー・金融安定化・FRB・決済担当
理事 ミシェル・ボウマン 上院承認 2018/11/15 '18/11/26~ 2020/1/31 カンザス州銀行監督官、女性 地銀担当
地銀担当
理事 マービン・グッドフレンド 上院承認待ち 銀行委員会承認済 保留中 カーネギーメロン大教授 中立 (タカ寄りとされる)
理事 空席

FRB理事の空席(2名分)の候補者について

2019年3月22日、トランプ大統領はFRB理事のポストにスティーブン・ムーア氏(ハト派)を指名すると明らかにした。
2019年4月4日、トランプ大統領は2席空席であった理事のポストにハーマン・ケイン氏(パウエル批判派)を指名する方針を明らかにした。
4月17日、トランプ大統領が連邦準備制度理事会(FRB)理事候補に指名する考えを示しているハーマン・ケイン、スティーブン・ムーア両氏に代わり得る候補者との面談を進めているとクドロー国家経済会議(NEC)委員長が明らかにした。
4月22日、ケイン氏はFRB理事就任を辞退しました。
5月2日、ムーア氏はFRB理事就任を辞退しました。
5月3日、WSJは、2018年1月までトランプ大統領の国内政策に関する諮問委員会の副ディレクターをしていたポール・ウィンフリー氏にFRB理事就任を打診したと報道した。
7月2日、トランプ米大統領は米連邦準備理事会(FRB)理事に選挙陣営元幹部のジュディ・シェルトン氏と、セントルイス連銀高官のクリストファー・ウォラー氏を指名すると発表した。

連邦公開市場委員会 (Federal Open Market Committee, FOMC)

RBが定期的に開く会合で、FRB理事7人と連邦準備銀行総裁5人(ニューヨーク連邦準備銀行総裁と、持ち回りで選ばれる他地区連銀の総裁4人で構成されています。それ以外の地区連銀総裁も議論には参加しますが議決権はありません)で構成されるアメリカの金融政策決定機関です。議長はFRB議長、副議長はニューヨーク連邦準備銀行総裁が担当します。
FOMC定期的会合は年間8回開かれ、フェデラル・ファンド金利の誘導目標、及び公定歩合を決定しますが、市場の急変時には臨時会議が開かれ、暫定的に政策金利などを決定します。

FOMCの日程(2019年)
1月29-30日
3月19-20日※
4月30日-5月1日
6月18-19日※
7月30日-31日
9月17-18日※
10月29-30日
12月10-11日※
2020年1月28-29日

※開催日には、経済予測と政策金利予想の発表と議長によるプレス・カンファレンスが予定されています。

上記FRB理事7名(現在は5名)とニューヨーク連銀総裁と以下の連銀総裁が2019年3月現在の投票メンバーになります。

2019年地区連銀投票メンバー

地区連銀 総裁名 就任 前職 タカ派/ハト派
ミューヨーク連銀 ジョンC.ウィリアムズ 2018/6/18予定 サンフランシスコ連銀総裁 中立
セントルイス連銀 ジェームス・ブラード 2006/3/1 中立(19年ハト)
シカゴ連銀 チャールズ・エヴァンズ 2007/9/1 経済学者 中立(19年はハト)
カンザスシティー連銀 エスター・ジョージ 2011/11/1 女性 タカ派
ボストン連銀 エリック・ローゼングレン 2007/7/23 中立(19年はタカ)

ハト派・タカ派

ハト派・タカ派という言葉は、もともと政治で使われる政治用語で、ハト派=穏健派、慎重派、平和主義者もしくは集団を指し、タカ派=強硬派、戦争など武力を辞さない強硬的な政治信条をもつ人、または集団を指す用語です。ハトは「鳩」であり、平和の象徴で穏やかなイメージに対して、 タカは「鷹」であり、鳩より強いということで、これらの言葉が対義語として使われています。

このハト派とタカ派が、経済の分野になると、ハト派は景気に対して慎重な見方をし、景気がよくなっても慎重になるため、利上げ反対派になります。また、金融緩和を行っている場合は、緩和の継続派になります。一方、タカ派は、景気に対して強気な見方をするため、景気がよくなるとインフレ懸念から、利上げや金融引締めに積極的なスタンスになります。

ハト派:成長志向、金融緩和を志向
タカ派:嫌インフレ、金融引締めを志向

将来の投票連銀の持ち回り予定

2020年 2021年 2022年
ニューヨーク連銀 ニューヨーク連銀 ニューヨーク連銀
クリーブランド連銀 シカゴ連銀 クリーブランド連銀
フィラデルフィア連銀 リッチモンド連銀 ボストン連銀
ダラス連銀 アトランタ連銀 セント・ルイス連銀
ミネアポリス連銀 サンフランシスコ連銀 カンザス・シティー連銀

金融政策の目的

最大雇用、安定した物価、適度な長期金利

連邦準備法(Federal Reserve Act) 第2条(a)項
The Board of Governors of the Federal Reserve System and the Federal Open Market Committee shall maintain long run growth of the monetary and credit aggregates commensurate with the economy’s long run potential to increase production, so as to promote effectively the goal of maximum employment, stable prices, and moderate long-term interest rates.
連邦準備制度理事会および連邦公開市場委員会は最大雇用、安定した物価、および適度な長期金利の目標を効果的に推進するために、経済の長期的な生産可能性に見合った長期的な通貨および信用枠の成長を維持するものとする。

政策金利、公定歩合

中央銀行であるFRBが市中銀行にお金を貸すときのレートです。通常FRBからお金を借りる銀行はほとんどいないので、市場に与える影響は限定的です。

FF金利(Federal Fund rate)

アメリカでは、銀行は預金量に合わせて一定量を中央銀行に無利子の預金として預けなければなりません。中央銀行に預ける為に銀行間で資金の貸し借りを行いますが、その市場をフェデラルファンド市場と言い、この市場で用いられる金利が「FF(フェデラルファンド)金利」です。FRBは直接FF金利を操作することが出来ないので、市場に出回る資金の供給量を操作することでFF金利を誘導します。

ドットチャート、ドットプロット(金利予想分布図)

米連邦公開市場委員会(FOMC)終了後に公表される政策金利見通しのことです。FOMC参加者によるFFレート(政策金利)予測のドット(点)を分布したチャートです。この予測点を時系列で結ぶと予想される政策金利の経路が推測できます。2012年1月から四半期毎に公表しています。現在理事を務める5名と12の各地区連銀総裁合わせて計17名の投票結果を反映しています。

ドットプロットは、FOMCの意図をマーケットに伝える有力な手段とされていますが、その一方で、予想が匿名で誰のドットかが特定できず、また新たな経済データの発表があれば陳腐化してしまうという問題点を抱えてます(予測の精度はあまり高くない)。

最新の政策金利・経済予測ドットプロット(2018/12/19、2019/3/20および2019/6/19)
2018年12月政策金利・経済予測ドットプロット
2019年3月政策金利・経済予測ドットプロット

2019年6月政策金利・経済予測ドットプロット

次回ドットプロットの発表は2019年9月18日の予定です。

CMEが公表するFF金利先物から計算した各FOMC開催時におけるFF金利確率

FF金利先物を上場しているシカゴ・マーカンタル取引所(CME)は、FF金利先物の価格から計算した将来の各FOMC開催時におけるFF金利確率を公表しています。市場参加者の金利予想(織り込み度合)をあらわしています。
政策金利予想確率


量的緩和政策(QE:Quantitative Easing)

量的緩和政策(QE)とは、金利の引き下げではなく市中銀行が保有する中央銀行の当座預金残高量を拡大させることによって金融緩和を行う金融政策で、量的緩和政策、量的緩和策とも呼ばれます。日本銀行が2001年3月19日から2006年3月9日まで実施していました。アメリカでも、リーマン・ショック以降の金融危機対策として、2008年11月より実施しました。

QE1:2008年11月~2010年6月
FRBが米国国債3000億ドルと住宅ローン担保証券(モーゲージ債)1兆2500億ドル、その他1750億ドルを合計1兆7250億ドル購入しました。

QE2:2010年11月~2011年6月
FRBが米国債を合計6000億ドル購入しました。

QE3:2012年9月
市場から住宅ローン担保証券(MBS)を月額400億ドル購入しました。雇用市場が改善するまで継続し、無期限で更なる追加緩和もあり得ると発表しました。
結果、FRBの米国債など保有資産は金融危機前の9,000億ドルから5倍の4.5兆ドルに膨らみました。

【表】量的緩和政策:FRB保有資産

左軸:FEDバランス・シート(100万米ドル)              右軸:FF金利(%)

出口戦略

景気回復を続けていくなか、ゼロ金利政策と量的金融緩和をいつどのように方針転換し金融引き締めというよりも正常化させることが現在の課題です。FRBはまず「ゼロ金利政策」を維持した上で、「量的金融緩和」を縮小していきました。
この「量的金融緩和の縮小」を「テーパリング(緩和逓減)」と言います。

当時FRB議長バーナンキは、2013/5/22 の議会証言でこの「テーパリング」を行う可能性があると発言しました。この時は、金融市場に大きな打撃を与えました。このテーパリングがいつから行われるのかは市場の関心を集めていました。バーナンキ議長は2013年12月18日、QE3における月額の債券買い入れ規模を初めて100億ドル縮小し、750億ドルとしました。その後、2014年1月、バーナンキを中心とする連邦公開市場委員会は以下のようにコメントしました。

FOMC声明文 2014年1月30日 ロイターより引用
委員会は2月から、保有するエージェンシー発行モーゲージ債(MBS)を月額350億ドルではなく300億ドルのペースで、米長期国債は月額400億ドルではなく350億ドルのペースで追加購入することを決めた。(中略)労働市場の改善が進み、インフレ率が長期的な目標に向かって戻るという委員会の見通しを広範に裏付けるならば、委員会は今後の会合でさらに慎重な足取りで(量的金融緩和のための)購入ペースを縮小するだろう。資産購入にはあらかじめ定まった道筋はない。委員会のペース決定は予測される資産購入の効率とコストの評価だけでなく、委員会の労働市場とインフレの見通しにも従うことになるだろう。
最大雇用と物価安定を目指した改善継続を支援するため、委員会は本日、資産購入が終了し景気回復が強まった後も相当な期間、極めて緩和的な金融政策の運営姿勢が適切であり続けるとの見解を再確認した。委員会は、0%から0.25%という異例の低水準である現行のフェデラルファンド(FF)金利の目標誘導の範囲が、少なくとも失業率が6.5%超にとどまり、1-2年先のインフレ上昇予測が長期目標の2%から0.5ポイント以内の上振れに収まり、長期的なインフレ期待が引き続き十分に抑制されている限り、適切であるとの見通しも改めて確認した。

2014年4月30日、FRBは連邦公開市場委員会声明で、5月から債券購入額を月額100億ドル減らして、計450億ドルにすることを決定しました。
2014年9月17日、FRBは連邦公開市場委員会後の声明で、同年10月の会合で量的緩和を終了する見通しを明記しました。
2014年8月20日、米連邦準備理事会は、先月分の連邦公開市場委員会議事要旨を公開し、(将来予定される)最初の利上げ後も当面、保有証券の償還資金再投資を継続することにほとんどの参加者が賛成していると公表しました。
2014年10月29日、FRBは連邦公開市場委員会で、量的緩和第3弾(QE3)の終了を決定しました。ただし、テーパリングの途中から、ゼロ金利政策は「相当な期間維持する」と発表し続けました。
結果的に2014年の1月から12月までに段階的に資産の購入を縮小していきました。
2015年12月16日、連邦公開市場委員会(FOMC)で、いわゆるリーマン・ショックのあと7年間にわたって続けてきた異例のゼロ金利政策を解除して、利上げを始めることを決めました。政策金利であるフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標水準は0~0.25%から0.25~0.5%に引き上げられました。
その後、2016年12月にも同様0.25ポイントの利上げを発表。市場も経済が上向いていることを認めており、この2回の「利上げ=金融引き締め」は市場にもネガティブに受け止められませんでした。
2017年には年3回の利上げを行いました。2017年10月21日FRBは量的緩和策で膨らんだFRBの資産を10月から段階的に縮小していくことを決めました。数度にわたる金融緩和で4・5兆ドルに膨らんでいました。米国国債などを買って大量の資金を供給してきた結果です。今後は、国債などの保有残高を徐々に減らしていくので、その分、市中のお金が減り、金融の引き締めになります。今後、金融政策は正常化の「仕上げ」に向かうことになります。
2018年3月には、フェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を25ベーシスポイント(bp)引き上げ1.50─1.75%とすることを決定しました。年内あと2回か3回の利上げが書状では想定されています。ドット・チャートを見る限り、今年の利上げ回数が計3回か計4回になるかを巡り、メンバーの意見は分かれたようです。利上げ回数見通しは、来年が3回、2020年は2回でした。今後の経済状況、インフレ状況をみながら、FOMCは金融政策を決定します。引き続き経済指標には、注意が必要です。

FRBは金融市場に対して慎重な情報発信をすることで、これまでも利上げを進めてきたにもかかわらず、実体経済に対する影響が大きいと考えられる長期金利は、ほとんど上昇してきませんでした。昨年決定された資産縮小に関しても、先々の縮小ペースはすでに明らかにされています。

世界金融危機(リーマン・ショック)

2008年に金融危機が起こった際には、利下げや量的金融緩和と区別して信用緩和と称して金融市場に積極的な流動性の供給を行い、また大手金融機関の救済に関連した信用供与を行いました。
2007年8月9日にBNPパリバ傘下のへッジ・ファンド凍結(BNPパリバショック※3)以降、インターバンクでの流動性懸念の高まり、大手投資銀行が資金繰りに利用していたレポ取引に支障が出るようになりました。2008年3月14日JPモルガン・チェースによるベア・スターンズ救済がありました。こうしたイベントによりFRBはいくつかの流動性供給ファシリティー(※4)の導入を行いました。米国では、FRBのディスカウント・ウインドウ(※5)を利用し融資を受けられるのは預金取扱機関に限られており、非預金取扱機関にディスカウント・ウインドウ(※5)を解放したのはFRBでは初めてでした。

名称 次期 対象金融機関 担当連銀 融資上限
ターム物入札ファシリティー(TAF) 2007/12/17~ 預金取扱機関(外銀支店含む) (全連銀)連銀の直接融資 融資上限なし
ターム物証券貸出ファシリティー(TSLF) 2008/3/27
~2009/10/30
プライマリー・ディーラー向け28日期日融資、週2回、社債は週1回(競争入札 (NY連銀)トライパーティ・レポ:適格証券(財務省証券、エージェンシー、エージェンシーMBS、投資適格社債)NY連銀保有の財務省証券を貸出 2000億ドル
プライマリー・ディーラー流動性ファシリティー(PDCF) 2008/3/17
~2009/10/30
プライマリー・ディーラー向けオーバーナイト融資 (NY連銀)連銀の直接融資 上限なし

リーマン・ブラザーズの破綻(2008/9/15)から金融市場は大きな混乱に陥りました。銀行から融資を受ける企業や消費者、コマーシャルペーパー(CP)で資金調達している企業は信用・流動性の枯渇に苦しんでいました。MMFの元本割れも起こり、短期金融市場の流動性逼迫は大きな懸念となっていました。また、証券化に伴う金融市場の混乱も収まってはいませんでした。金融システムのみならず実体経済にも大きな影響を与えていたことから、FRBは新たな流動性供給ファシリティー(※4)を導入しました。

2008年、2009年の金融危機(リーマン・ショック)時にFRBが行った流動性供給ファシリティー(※4)

ボストン連銀

実施日 対象者 対象証券 融資・買取上限
ABCP・MMF流動性ファシリティー(AMLF) 2008/9/19
~2009/10/30
預金取扱機関、銀行持株会社、
外銀在米支店
MMFから買取が行われたABCP、短期格付け(A1/P1/F1) 上限なし

ニューヨーク連銀

実施日 対象者 対象証券 融資・買取上限
CPファンディング・ファシリティー(CPFF) 2008/10/27
~2009/10/30
適格CPの発行者 国内$建てCP、ABCP(最上級格付け) 上限なし(個別発行体ごとに上限)
短期金融市場投資家流動性ファシリティー(MMIFF) 2008/11/24
~2009/10/30
MMF、金融機関保有のファンド、レポ取引の現金担保 7日~90日のBA、銀行手形 6000億ドル
ターム物ABS融資ファシリティー(TALF) 2009/3/17
~2009/12/31
適格ABSの保有者(米国企業、外銀在米支店、米国のファンド) ①自動車ローン、学生ローン、カードローン、中小企業局保証融資のABS
②CMBS、民間RMBS、CLO(最上位格付け)
1兆ドル
MBS買取プログラム 2009/1/5
~2009/6/30
プライマリー・ディーラー FNMA、FHLMC,GNMAのMBS 5000億ドル

また、クレジット・デフォルト・スワップを大々的に行っていた大手保険会社AIGにも経営危機が迫り、FRBは救済を行いました。ベア・スターンズやAIGの救済に関連して様々なノンリコース・ローンを提供しました。問題となった金融機関からRMBSやCDOなどの問題となっていた資産を買い取ることを目的としてFRBが連結対象の特別目的会社(SPV)を設置し、FRBがSPVに買い取り資金を融資するというスキームで融資が行われました。
また、シティーグループやバンク・オブ・アメリカにもFRBは融資を行いました。

2008年10月3日に当時のブッシュ政権は2008年緊急経済安定化法を成立させました。金融機関からの不良資産を買い取るための7,000億ドルのプログラム(TARP:Troubled Asset Relief Program)や、預金保険の補償範囲の一時的な引上げ等の施策が講じられました。その後、TARPについては当初の目的である不良資産の買取りには用いられず、金融機関への資本注入等に充てられることになりました。財務省はこの法律のもと預金取扱機関に資本注入を行う資本買取プログラムを導入し、多数の銀行やAIGに資本注入を行いました。

また政府は、金融機関からの不良資産買取りのための「官民投資プログラム」(PPIP:Public Private Investment Program)を2009年3月23日に公表しました。不良資産の買取規模が5,000億ドル(将来的には1兆ドル規模に拡大可能)とされ、官民共同出資の不良貸出債権プログラム(Legacy Loan Program)とFRBによる不良証券プログラム(TALFの購入対象の拡大とRMBS、CMBSを買い取るファンドの設立)で構成されていました。

FEDは利下げだけでなく、量的金融緩和(QE)も都合3回に分けて実施しています。FEDのバランス・シートは、リーマン・ショック以前に比べて、3倍の規模になりました。

こうした金融政策だけでなく、さまざまな金融救済プログラムを実施することで、アメリカ経済は復調することができました。

※3:BNPパリバショック
為替相場は短期間に大きく変動し、ドル円は約10円、ユーロ円は約15円、ポンド円は約20円、それぞれ1週間で下落しました。

※4:流動性供給ファシリティー
中央銀行にとってみれば、資金過不足が適切にコントロールされていれば、個々の民間金融機関における資金過不足は、基本的に、金融市場を通じた資金の相互融通により調整される。しかし、現実には、様々な制約から必ずしもこうした調整が円滑に行われず、民間金融機関が資金を調達(運用)するために借入(貸付)金利を大幅に引き上げ(下げ)ざるを得ない状況に陥り、短期の市場金利が金融調節上の誘導目標から大幅に乖離する事態が起こり得る。このため、各中央銀行では、オペによる金融調節を補完し、短期の市場金利を安定化させる仕組みとして、中央銀行が民間金融機関からの申込みを受け、ごく短期間、予め定められた金利により受動的に資金貸付けもしくは預金受入れを行う制度を設けており、これを流動性供給ファシリティー(常設ファシリティ)と呼んでいる。

※5:ディスカウント・ウインドウ
米連邦準備理事会(FRB)には「割引窓口(discount window)」という機能があります。この機能を通じて、例えば1日の業務の終わりに資金不足が判明した銀行などに、FRBは通常業務として短期資金を供給しています。こうした立場にある銀行は、翌日物資金を借り入れたいと考えます。銀行はFRBに担保を差し入れ、その担保に基づいて、銀行は「公定歩合(discount rate)」と呼ばれる金利で翌日物資金を借り入れることができます。